診断士日記 #3 整骨院編

 こんにちは、福岡で中小企業診断士として活動している 田中 きょういち と申します。どうぞよろしくお願いします。

 先日、福岡県で開業されている整骨院の経営改善の仕事を受託しました。

 今回のブログは、整骨院ビジネスについて現場で感じたことを綴ってみます。

 多分、整骨院は身近なお店だと思いますし、特に中高でスポーツ系の部活をやっていらっしゃった方は、お世話になった経験のある方も多いでしょう。

 整骨院を開業するためには、柔道整復師という国家資格が必要です。柔道整復師の資格を取得すると、主に骨折・脱臼・捻挫・打撲・挫傷(肉離れ)などの外傷に対する施術を行うことができます。

 一般人にとっては、柔道整復師と、理学療法士と、整体師のサービス内容は、区別がつきにくいかもしれません。柔道整復師の資格取得のための専門学校もあります。技術者養成の現状や人材確保の問題についても、後ほど少し触れたいと思います。

整骨院の市場規模について

 株式会社矢野経済研究所の調査によると、2023年の柔道整復・鍼灸・マッサージ市場は前年比3.0%増の9,850億円と推計されます。高齢化の進行や健康意識の高まりを背景に、市場規模は堅調に推移しているようです。

競合について

 福岡県の柔道整復師施術所数は、R2年2,170件からR4年2,249件と79件と全国2位の増加件数、人口10万人あたりの件数はR2年42.3件からR4年44.0件と増加しています(厚生労働省令和5年集計「衛生行政報告書」より)。私が担当した整骨院も、立地がとても良かったので、店舗から半径500m圏内に競合店舗が約20件ありました。

 また、整骨院だけでなく、整体・カイロプラクティックなどの周辺業種、マッサージ専門店、ヨガスタジオなど新業態との競争も激化しており、サービスの差別化を図る必要性が高まっています。

広告制限について

 整骨院が競争相手との差別化を図るに当って大切になるのが、広告戦略だと思います。

 ほとんどの整骨院は、ホームページやインスタグラムなどで情報発信をなさっていますが、注意しなければならないのは、広告制限があることです。

 柔道整復師の広告には、以下のような柔道整復師法や医療広告ガイドラインに基づく制限があります。

【許可されている内容】

  • 施術所の名称(○○整骨院、○○接骨院など) 
  • 施術者の氏名
  • 施術者の資格(柔道整復師) 
  • 施術所の所在地、電話番号
  • 施術日・施術時間
  • 健康保険の取り扱い(ただし、適用範囲を超えた表現はNG) 

【禁止されている表現】

  • 「必ず治る」「即効性あり」「驚異的な回復力」などの効果・効能を保証する表現
  • 「地域No.1」「最先端の技術」「他院ではできない施術」などの他院と比較して優位性を示す表現
  • 「厚生労働省認定」「〇〇学会推薦」などの公的機関からの承認・推奨を示唆する表現(実際に認定されていてもNG)
  • 「この整骨院に通ったおかげで治りました!」などの患者の体験談や口コミを利用した広告、など

 禁止されている広告表現は他にもありますし、インターネット広告やその他SNSへの監視が厳しくなっている点にも気を付ける必要があります。違反した場合は、行政指導や業務停止処分の対象となる可能性があります。

人材確保について

 柔道整復師の国家試験合格者数は、第20回(2020年度)では約5,000人あったものが、第32回(2023年度)では3,300人程度(船井総研グループ調査)と減少しています。柔道整復師を目指す方の数が減少している一方、整骨院の施設数は増加傾向にありますので、人材確保が重要な課題となっています。

 柔道整復師養成課程を提供する専門学校や大学では、一定期間の臨床実習が必修科目として設定されています。この実習は、整骨院や病院などの医療機関で行われ、学校が提携する施設で実施されるのが一般的です。

 整骨院にとってこの実習期間は、人材確保に向けて学生といい関係性を持つための、またとないチャンスだと感じました。

まとめ

 整骨院業界は、規制緩和に伴う市場拡大により多くの事業者が参入し、競争が激化しています。その結果、供給過多や不正請求問題、大型倒産などの課題が顕在化しているのも事実です。競争の激化に伴い、大手チェーンや介護事業者、多店舗展開企業による買収が増加しており、業界再編の動きも見られます。

 厳しい時代だからこそ、毎回申し上げておりますが、まず経営戦略が必要です。経営計画を策定し、収益管理をしっかりやっていく事が重要です。業界が盛り上がって、若い人が希望を持って飛び込んでいける職場になる事を、望んでやみません。

 私が今回触れることが出来たのは整骨院ビジネスの一面でしょう。このブログをお読みいただいた方で、こんな事もあるんだよ、という事を教えて頂ける方がいらっしゃいましたら、どうぞご意見をお寄せください。読者の方のお役に立つ情報も、きっとあるでしょうし、私の知識不足や勘違いをご指摘いただけるとありがたいです。 今後もいろいろなビジネスについて、現場に触れて感じたことをブログに綴っていくつもりです。どうぞよろしくお願いします。