診断士日記 #1 幼稚園・保育園編

こんにちは、福岡県で中小企業診断士として活動している田中きょういちと申します。日々の活動の中で、感じた事、気が付いたこと、などを日記調にブログにしていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。

福岡県の、ある幼稚園の仕事を頂きましたので、今回のブログでは福岡市の幼稚園・保育園ビジネスについて、現場で感じたことを綴ってみます。
まず、幼稚園・保育園ビジネスについて、福岡県ではないんですが、知合いのお寺が保育園を経営していた事もあって、行政の補助金もあるし、大儲けは出来ないけれど、長い目で見れば比較的安定して収益を上げられる事業なんだろう、というのがわたしの認識でした。でも、それは甘い考えでした。

「待機児童」問題について

「待機児童」という言葉に、入園を待っている児童がたくさん存在するのだから、幼稚園・保育園ビジネスには同業者との競争なんてほとんどないのではないかと推測していました。

しかし現実は、令和6年4月1日時点の福岡市の待機児童数はゼロ、因みに北九州市もゼロ。福岡県全体でも待機児童の人数は57人です(福岡県庁HPより)。
福岡県では待機児童の問題は、年間を通じて見ると「完全に解決した。」とは言えないかもしれませんが、申込児童数と利用定員の需要と供給のバランスが均衡してきています。
福岡県の利用定員数の推移(子ども・子育て支援法に基づき市町村が定めた定員)を見ると、令和4年130,519人、令和5年130,494人、令和6年130,172人と微減。一方、申込児童数は、令和4年124,627人、令和5年124,548人、令和6年125,090人と、こちらは微増です。そして、各年度とも利用定員数>申込児童数です。
福岡市の幼稚園・保育園事業者については、令和5年時点で認可保育所数は約400施設に達しています。今後、少子化が進展するのは確実なので、幼稚園・保育園が集中する都市部では、常識的に考えて競争が厳しくなっていくはずです。
つまり、保育園・幼稚園ビジネスにおいても、それぞれの事業者が特色を出して、他の園との差別化を図って、生き残るための戦略を考えなければならない時代になったと、そう思わざるを得なくなりました。知り合いのお寺は、大丈夫かしら。

保育士さん不足の問題について

幼稚園・保育園事業の収益を圧迫する主な要因は、人件費と土地建物の賃借料です。これらは固定費なので、園児が集まらないと利益が出ません。そこで、体験教室や、兄弟児の入園に力を入れて、せっせと園児を呼び込む事になります。特に、認可外保育園は、通常は認可保育所よりも保育料が高額になるため、事は深刻です。認可外保育園にとって、令和元年の保育料無償化のインパクトは結構大きかったと、現場調査の際に聞きました。
しかし、認可外保育園は不利な事ばかりではありません。
企業主導型保育事業という制度が平成28年度に創設されましたが、国の規制は認可保育園と比べると緩やかなので、比較的柔軟な保育サービスの提供が可能です。
保育士さんの離職率が高いのは、給与水準が低い、という問題もありますが、一方で運動会や様々な年間行事に保育士さんが忙殺されて、やってられないというか、過酷な労働環境になってしまっている、という理由もあります。
その点、認可外保育園は働き方に応じた多様で柔軟な運営が可能という事になりますので、その辺りの事情に詳しい、特にベテランの保育士さんは、あえて認可外保育園を選択するという事もあるようです。つまり、不足していると言われる保育士さんの獲得については、認可外保育園の方が、認可保育園より有利な点があるという事です。もちろん、各保育園の経営方針の影響が大きい事は言うまでもありません。

まとめ

以上今回の仕事で、わたしが特に感じたことを簡単にまとめてみました。
当たり前の結論になってしまいましたが、幼稚園・保育園ビジネスについても、他の事業同様に、経営戦略が必要で、経営計画を作って、収益を管理して、という事をやっていかなければいけない、というのが感想です。むしろ制度上の決まりが細かい分、事業の舵取りが難しい、という事も分かりました。わたしのような中小企業診断士でも、何かのお役に立てるかもしれません。
わたしが今回触れることが出来たのは幼稚園・保育園ビジネスの一面でしょう。このブログをお読みいただいた方で、こんな事もあるんだよ、という事を教えて頂ける方がいらっしゃいましたら、どうぞご意見をお寄せください。読者の方のお役に立つ情報も、きっとあるでしょうし、わたしの知識不足や勘違いをご指摘いただけるとありがたいです。
今回は、幼稚園・保育園ビジネスの話でしたが、今後もいろいろなビジネスについて、現場に触れて感じたことをブログに綴っていくつもりです。どうぞよろしくお願いします。